幸福論

駅前のマンションの周りをカラスが風に流されながら飛んでいた.まるで遊んでいるようで愉快だった.通りすがったおばさんが,カラスを見上げながら「大変そうね」とふたりごちた.

電車の向かい側の座席に孫2人と老夫婦が座っていた,婦人は寝ていて,孫は座席に立ちながら菓子を食べ,それを楽しそうに殿方が見ていた.降車駅が近づくにつれて子供たちがはしゃぎだして扉の前を行ったり来たりしながらお爺さんを取り合ったりしていた.そのあいだもお婆さんは寝たままだった.隣の女性が,あのひと何もしないねとふたりごちた.自分の子供を育て,主人の世話がまだ終わっていないひとでも,自分の子供の子供の面倒まで見ないといけないのだろうか.

自分で画像をプリントする機械が4台のうち1台だけ落ちていた.女性の客が訳を尋ねてきたので説明をすると納得をしてくれた.別種の機械に案内したら,操作ガイドが終わる前に1台が開いたのでふたたび案内した.ありがとうございますと言ってくれた.違うときに男性の客が3人の客の後ろでしばらく待っていた.とつぜん歩き出して電源の落ちていた機械のモニタを無言で殴りつけてから去っていった.

帰り道の夜空にオリオン座が浮かんでいた.冬になればいつでも見ることのできる光景.同期が地元では星が全く見えないと言っていた.同じものを眺めていても見えているものが違ったりする.

俺は幸せになりたい.